ネクスト・マーケット

 

協力隊の訓練期間中に、同期隊員の本棚で見つけて知った本。
日本で買って、セネガルに持ってきました。

セネガルで4ヶ月ほど生活して気になるのは、お金のこと。
村人たちはどうやって収入を得、管理し、消費しているのだろうか。

ここ、メディナサバ村は郡庁所在地であり、商店もあり、
市場もあり、電気や水道などのインフラもある。
仕立て屋、金属加工屋、公務員など、収入も
それなりに安定した人たちも少なからずいる。

が、郡内の他の村では状況が異なる。
しかし、そういった村ですら、携帯電話、洗濯洗剤、
化学調味料などを普通に見かける。
セネガルに俺らがJICAの青年海外協力隊として派遣されるように、
「貧困層=開発援助の対象」という見方がある一方で、
彼らはネクスト・マーケット、つまり、「貧困層=次なる市場」でも
あることを、身をもって感じる。

頭の中でネクスト・マーケットというキーワードが悶々としていた
ので、雨季で外出したくない今日この頃、読んでみることにした。

今日の日記は、その読書感想文です。

1.今、俺はネクスト・マーケットの中に居る!

携帯電話は毎月払わなければならない基本料金は存在せず、
お金があるときにだけ小額から購入できるプリペイドカード方式。

洗剤や調味料は日本で売られているようなサイズではなくて、
1回から数回で使い切ってしまうような小袋単位で販売されている。

本書に書かれているような市場に、まさに、自分が
生活しているので、「そう、そう!」と共感する点が多い。

2.ビジネスで解決できる貧困問題ある。

表紙に「貧困問題はビジネスで解決できる!」と書いてある。
さて、どうだろう。
さも、「貧困層が顧客になる⇒貧困問題解決」と
錯覚しそうになるけど、そうではないでしょう。

あくまで、本書は開発寄りというよりは、ビジネス寄りの
本であって、読んでいても、消費者(貧困層)よりは
企業を主役として書かれている感じがした。
だから、貧困層にとっての貧困云々の内容よりは、
ネクスト・マーケットをターゲットとした企業に
とっての経営手法の内容の方が充実している。

3.ネクスト・マーケットを生み出せる国、生み出せる村の条件

著者がインド人ということもあってか、成功例のほとんどがインド。
あとはブラジルとかメキシコとか。
途上国ではあるけど、どちらかといえば、
成功しつつある方の途上国よね、と思った。
セネガルもそっちの部類に入るのだろう。

あと、対象としている農村も、停電が多いものの、
基本的には電気のインフラがあるとか、ある程度の
人口があるとか、村人の識字率があるとか、そういった
条件をクリアーしている村である場合が多い。
セネガルでいえば、ここ、メディナサバ村ぐらい恵まれた環境かな。

本書で紹介されているように、貧困層が家電製品、住宅建設、
義足、眼の手術、インターネットアクセスといった製品、サービス、
情報を得られることによって、人々の暮らしが
改善していく可能性があることはすばらしいと思う。
でも、そのネクスト・マーケットの中に
入れない最貧国や、最貧困層もまだまだ多い。

4.大企業にとってのネクスト・マーケット

本書で紹介される企業はたいてい、大手多国籍企業だったり、
インド国内で規模2位の銀行だったりと、この本でビジネス界が
強みとする、資本を持った企業となっている。
本書ではそういった企業と、彼らの消費者、もしくは、パートナーと
なった元貧困者がwin-winの関係であるとしている。
しかし、loser(敗者)はどこにもいないのだろうか。

これは著者も認めているが、大企業がインターネットで
農作物の市場価格を農民に直接、知らせるシステムを
築いたことで、それまで、農民から農作物を安く買い
叩いてきたとされる地元の仲買人の収入は激減した。
おもしろくないと思っている仲買人たちが農民や、この企業関係者に
対して良からぬ行為に打って出る危険性も十分にありえるだろう。

また、石鹸を使った手洗い習慣の普及によって下痢症の
予防と、自社製石鹸の販売増を目標とする大手石鹸メーカー。
このメーカーは国際機関や、政府ともタイアップして手洗い励行
キャンペーンを行っていて、どうやら、セネガルでもやっているらしい。

一方、メディナサバ近くの村では日本やアメリカのボランティアが
村の女性たちの収入向上活動の一環として、
廃油手作り石鹸の講習をやってきている。
聞いた話では、アメリカのボランティアが去った今でも、
女性たちは石鹸を作り、販売し続けているという。
もし彼女たちの村の近くで、「○○社の石鹸で手をきれいに
洗って、下痢症をなくそう!」なんてやられたら、どうだろう。
仮に、それで石鹸の普及率が上がり、下痢症が減ったとしても。

なんてことを考えた。

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