BLOG

宿泊分析2019 Business Analysis

おしごと Owner's Works

一部の宿泊・観光事業者のみなさまにはご好評の、ゲストハウス若葉屋 宿泊分析の時季となりました。
では早速、2019年のゲストハウス若葉屋の宿泊状況について、分析していきましょう。
めちゃ長いです。


(2019 インバウンド人泊率)

まずは、日本国内客:訪日客の割合は、きれいに6:4でした。
2019年は瀬戸内国際芸術祭が開催されましたので、訪日客が増加したのかと思いきや…


(2018 インバウンド人泊率)

2018年のグラフと見比べると、見事なほどに、ほぼ同じ!
春会期中と夏会期中の単月での割合を見ても、2019年のインバウンド率がわずかに5%ほど高いだけでした。
(訪日宿泊客数が伸びなかった要因については、後述。)
秋会期中に限っては、2019年はインバウンド率が68%と、跳ね上がっています。
瀬戸芸2019の総括報告書がまだ公開されていないので、訪日客の入り込み状況について詳しくはわかりませんが、総来場者数では、確かに、春会期31日間で386,909人、夏会期38日間で318,919人、秋会期38日間で472,656人と、秋会期の来場者数がかなり多かったことがわかっています。
それに伴い、若葉屋でも秋会期中に瀬戸芸をターゲットに宿泊された訪日客が多かったのだと思われます。

瀬戸内国際芸術祭 2019 の総来場者数について

(2019 国別宿泊人泊数の割合)


(2018 国別宿泊人泊数の割合)

次に、訪日客の国別の内訳を、2018年と比較してみます。
まずは、台湾が9%→26%と、激増しています。
これは瀬戸芸2016のときも同様(32%)で、瀬戸芸では台湾が増えます。

次点は韓国の12%ですが、例によって、2019年半ばからは失速し、通年では7%の減少。

3位の中国は16%→11%のわずかに減。

注目すべきは、これまでわずか3〜5%しかなかった米国+カナダが11%に伸びたこと。
中国に追いつきまして、同率3位。

韓国、中国、米国+カナダとほぼ並ぶのが、安定のフランス。
若葉屋はオープン以来、フランスが常に上位に居ます。
フランスを含む欧州が、全体の4分の1を占めます。

そして2019年もやはり、伸びてきたのが豪州+NZ(大洋州)。
ここ数年、じわじわと増えてきて、2019年は5%。

逆に、激減しているのが香港+マカオ。
2017年17% → 2018年10% → 2019年4%。
なんと、豪州+NZよりも少なくなりました。

香川県全体での訪日宿泊客の割合や推移とも比較してみたいところですが、本日時点ではまだ、2019年の確定値が出ていません。

観光庁 宿泊旅行統計調査


(2019 国・予約経路別 予約件数割合)

では次に、みなさん、どうやって若葉屋を予約しているのでしょうか。
ご覧のとおり、大半の国にとって、最大の予約経路はBooking.comです。
しかし、フランスと、米国+カナダでは直予約が僅かに、Booking.comを上回り、台湾も直予約とBooking.comが拮抗しています。
日本では圧倒的に直予約が多いです。
意外なのが、日本人でもじゃらんnetや楽天トラベルよりも、Booking.comでの予約のほうが多いことです。
予約件数としては、日本人のほうが訪日客よりも圧倒的に多いため、全予約における予約経路の割合では、直予約がBooking.comの倍近い数値となりました。

若葉屋の予約経路は以下のとおりです。

  • 直予約(主に公式サイトと電話。わずかにメール、FB、対面、微信、LINEなど)
  • 海外OTA(Booking.com(提携先のAgoda、Ctripもわずかに含む)、Airbnb)
  • 国内OTA(じゃらんnet、楽天トラベル)

OTA経由での予約については、宿泊施設がOTAに対して手数料を支払う必要があるため、若葉屋では予約の受付期間を意図的にずらしています。
直予約は3ヶ月後の末日までのチェックイン分(最長120日)とし、OTA予約は翌月末までのチェックイン分としています(最長60日)。
2018年はOTA予約を翌々月の末日までのチェックイン分を受け付けていて、2019年はその期間を1ヶ月、短縮しました。
また、GW、お盆、年末年始、連休などの繁忙日は、個室を中心に、OTAでの販売を直前まで売止にするなどしています。
(その代わり、繁忙期割増料金の設定はしていません。)
そういうわけで、OTAでは若葉屋を60日以上前からは予約ができなくなったり、繁忙日はOTAで予約がしづらくなったりしているため、Booking.comを主に利用している訪日客の宿泊について、2019年は瀬戸芸があったにもかかわらず、伸びなかったのだと分析しています。


(2019 地域・予約経路別 予約件数割合)

先ほどのグラフを簡素化して円グラフにしました。
緑は直予約、青は海外OTA、赤が国内OTA。
地域は東アジア、欧米豪、日本に分けています。


(2019 地域・予約経路別 売上割合)

おもしろいのは、先ほどの予約件数の割合と、この売上の割合の円グラフの比較です。
後述しますが、日本人は予約件数が多いものの、連泊が少ないため、予約件数が多い割に、売上は低いです。
反面、訪日客は連泊が多いため、売上が多くなるのですが、その中でも割合を大きく伸ばしているのが、直予約による売上です。
海外OTAの予約件数割合18%→売上割合21%の変化は微増なのに対して、直予約の予約件数割合11%→売上割合20%と、倍増。
直予約は、OTAへの手数料を抑えるだけでなく、個室や連泊など、高額な予約の獲得に貢献していることがわかりました。


(2018 地域・予約経路別 売上割合)

2018年と比較しますと、直予約による売上は2018年49%→2019年58%、海外OTAは2018年34%→2019年30%、国内OTAは2018年17%→12%と変化しています。
OTAの予約受付時期を1ヶ月短縮したことで、全売上に占める直予約売上が相対的に上がりました。

「直予約が増えても、OTA経由での受注機会を減らすことで、売上は下がったのでは?」
2018年と2019年の売上を比較すると、2019年は瀬戸芸もあったので、上がっ…てないのです!
実は、若葉屋の売上は、2019年よりも2018年のほうが多いのです。
駄目やん。
しかし、2019年の若葉屋は278日しか営業しておらず(年間87日も休館)、一方、2018年の営業日数は306日なので、売上を営業日数で割ると、2019年のほうが多かったです。
同様に、売上に対する、OTAに支払った手数料の割合を見ても、2019年の方が2018年よりも1%低かったので、OTAの予約受付期間を短縮したことで、売上は十分に確保しつつも、OTAへの支払手数料を節約することになりました。
わずか1%ですが、案外、数万円の差があります。
さらに、後述しますが、キャンセル率に関しても、低下させることに成功しました。


(2019年 リードタイム・予約経路・泊数相関)

リードタイム(チェックインの何日前に予約をしているか)、予約経路、泊数を、宿泊の件数単位(キャンセルは除く)で分析しました。
ご覧のとおり、

  • 1泊のみの宿泊が圧倒的に多い(71%)
  • 1泊のみの宿泊では、直前予約が多く、リードタイムが長くなるほど、予約件数は減っていく
  • 連泊では、リードタイムと予約件数に相関はほぼ、見られない
  • どのリードタイム、どの泊数でも、概ね、予約経路は直予約が一番多い

です。


(2019年 リードタイム・予約経路・部屋別相関)

続きまして、部屋別での分析です。

  • ドミトリーでは直前予約が多く、リードタイムが長くなるほど、予約件数は減っていく
  • シングル、ツインとも、最も多くの予約を得ているのは、61日以上前からの、直予約
  • ツインでは、リードタイムと予約件数に相関はほぼ、見られない
  • 一方、シングルでは、リードタイム30日以内では、予約件数にばらつきはないが、31日以前の予約になると、件数がやや減る


(2019年 国別リードタイム割合グラフ)

次に、これらリードタイムを、宿泊者の国別に分析します。

リードタイム0-3日の、直前予約の傾向が強いのは、米国+カナダと欧州。
旅をしながら、次の旅先を決めていくスタイルです。

逆に、リードタイムが31日以上と、早いうち(出発前)に予約をする傾向があるのは、予想通りの台湾と、意外なフランスと豪州+NZ。
台湾人は日本人以上に計画的、効率的に旅行をする傾向がありますので、納得です。
フランス人は両極端なようで、リードタイム0-3日も41%ある一方、31日以上も42%あります。
豪州+NZは、台湾人よりは直前傾向があるものの、比較的、リードタイムが長いです。

日本人はというと、手近な国内旅行ということで、台湾、香港、中国人に比べれば、直前傾向が強いです。
面白いのは韓国人で、リードタイムの配分が日本人とほぼ同じ。
韓国人にとっての日本旅行は、国内旅行感覚なのかも知れません。


(2019年 国別宿泊人数割合グラフ)

さて、みなさんは何人(なんにん)で、若葉屋に宿泊しているのでしょう。
まず、日本人と訪日客を比較しますと、日本人の方が、ひとり旅が10%多く、ふたり旅(主にカップル)が10%少ないです。
特にふたり旅が多いのは、フランスを含む欧州と、意外と台湾でした。
合計と比較して、ひとり旅が特に多いのは韓国と香港でした。
グラフには出していませんが、10歳未満の子ども連れファミリーの宿泊は、日本人で53件、訪日客で10件あり、全予約に占める割合は7%でした。
特にお盆、年末年始などはファミリーの宿泊が、多くなっています。


(2019年 国別宿泊日数割合グラフ)

次に、若葉屋で何泊しているかです。
飛び抜けているのは、日本人の「1泊のみ」の多さです。
日本人の連泊はわずか、16%です。
先述の、「日本人は予約件数が多いものの、売上が少ない」要因は、これです。
一方、訪日客は概ね、半分かそれ以上が連泊です。
豪州+NZでは7割近くが連泊です。
韓国や台湾といった、近隣国からの訪日客でも、3泊以上が3割も占めています。


(2018年 国別宿泊日数割合グラフ)

瀬戸芸に多く訪れた東アジアからの訪日客(特に台湾人)では、連泊が伸びたように感じていたので、2018年と比較してみましたが、韓国を除いて、連泊は微増にとどまりました。
逆に、豪州+NZ、米国+カナダ、欧州で連泊が伸びています。


(2019年 リードタイム・予約経路・売上等相関)

次に、売上との相関を見ていきます。
先述のとおり、全体の予約件数で見れば、リードタイム15日以内の予約で60%ほどを占めるものの、こうして売上で見てみると、リードタイムの長い予約は、予約件数の割に、売上には貢献していることがわかります。
特に、最も売上につながっているのは、61日以上前からの、直予約です。
リードタイムの長い予約は、その件数が少なくても、個室や連泊の予約が多いからです。


(2018年 リードタイム・予約経路・売上等相関)

2018年と比較してみます。
注目すべきは、海外OTAのキャンセル率です。
2018年の36%から、2019年は27%と、約10%も減少しました。
全予約におけるキャンセルの内、訪日客のキャンセル率に至っては2018年40%から、2019年23%と、激減しています。
日本人客も含めた全予約におけるキャンセル率でも、2018年25%から、2019年20%と、5%の減少です。

OTAの予約受付期間を短縮した狙いの一つは、キャンセル率の引き下げです。
OTA予約は、リードタイムが長いほど、キャンセル率が高くなるという傾向が強かったからです。
一方、直予約はOTA予約に比べてキャンセル率が低く、リードタイムが長くなっても、さほど顕著にはキャンセル率が上がらないことがわかっていました。

ちなみに、2019年のNOSHOW(無連絡不泊)は、日本人の1件のみでした(オンライン決済予約であったため、キャンセル料100%を徴収)。


(2019年 地域・支払方法別売上割合)

オンライン決済という言葉が出てきましたところで、キャッシュレスについて。
若葉屋の決済手段は以下の通り。
(*の決済手段は、決済が発生することで、若葉屋が決済会社に対して手数料を支払うもの)

  • オンラインキャッシュレス O/CL(じゃらんオンライン決済*、じゃらんポイント、楽天事前カード決済*、楽天スーパーポイント、Booking.comオンライン決済、Airbnbの全予約、わずかに直予約の事前カード決済*)
  • 現地キャッシュレス CL(VISA*、MasterCard*、American Express*、PayPay、LINE Pay、Alipay、WeChatPay、NAVER Pay)
  • 現金

O/CLは宿泊客が予約時に、自由に選択できるようになっています。
O/CLとしなかった場合、チェックイン時に宿泊客がキャッシュレス決済を申し出た場合にはキャッシュレス対応とし、それ以外は現金決済としています。

上の円グラフを見て、目につくのが日本人の現金払い率の高さです。
日本人からの売上に占める現金払いの割合は、78%に上ります。
一方、訪日客は東アジア、欧米豪とも、O/CL+CLがわずかではありますが、現金払いを上回っています。


(左上 2019年 男性年齢構成比)
(左中 2019年 女性年齢構成比)
(左下 2019年 男女合計年齢構成比)
(右  2019年 男女比)

さて、終盤です。
男女年齢構成比を見ていきます。
男性の方が女性よりも10%ほど多いのは、開業以来いつものことで、若葉屋のドミトリーが男女混合しかないからだと思います。
年齢層は、20~30代で60%ほどを占め、メインとなる層です。
意外と思われるかもしれませんが、40代以上の中高年層も4分の1ぐらいを占めています。
若葉屋は83番札所一宮寺と84番札所屋島寺の中間地点の遍路道沿いにあるため、お遍路さんも多いです。
2019年はちょうど100人のお遍路さん(ミニ遍路含む)が宿泊されました。

ちなみに、2018年と比較してみましたが、違いはほぼ、ありませんでした。
瀬戸芸があったので女性の割合が増えたかと思いましたが、そんなことはありませんでした。
瀬戸芸2016以後、高松市内では宿泊施設が激増したので、男女混合ドミトリーに抵抗のある女性客は、そちらへ流れたのかと思います。


(2019年 国内地方別割合)

最後に、日本人客の地方別の割合です。
関東と近畿で半分強を占め、残りを四国、中部、九州、中国がほぼ横並びで、北日本がわずかという構成です。
毎年、こんな感じです。
関東からは飛行機利用が多く、近畿からは車利用が多いです。
若葉屋の駐車場、駐輪場の利用としては、2019年は車が364台、自転車が66台、バイクが58台でした。


確定申告前のおまけ。
経費上位10位の割合です(支払利息、租税公課、減価償却費を除く)。
OTAへの手数料は「販売手数料」、決済手数料は「支払手数料」です。

【寄付団体・加入団体】
NPO法人アーキペラゴ せとうちクリーンアップフォーラム
http://www.archipelago.or.jp/scf/

一般社団法人 街角に音楽を@香川
https://www.machikadomusic.net/

一般社団法人 へんろみち保存協力会
http://blog.iyohenro.jp/

香川県立三木高等学校後援会

JNTO認定外国人観光案内所
https://www.jnto.go.jp/jpn/projects/visitor_support/list.html

公益社団法人香川県観光協会
https://www.my-kagawa.jp/organization

2020年も、ゲストハウス若葉屋ですてきな旅が生まれますように。

関連記事